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【小説】きんいろの国のアリス【二次創作】

きんいろの国のアリス

 夏、日本の夏。こう言うと何処か風情のあるように感じてしまいますが、実際はムシ暑くて仕方がありません。もう17回もこの夏を経験しているというのに。むしろ、年々ムシ暑さが増している気がします。

 今は夏休み。去年から我が家にホームステイしている、英国きんぱつ美少女のアリスに、この暑さについて訪ねてみましたが、

「シノ! 夏が暑くて冬が寒いのは、風流を楽しむ日本(ニッポン)文化の基本なんだよ! 夏のこの陽気こそ、まさに日本(ニッポン)を感じてるって気がするよ!」

なんて言われてしまいました。

 私もアリスみたいに暑さを楽しめればよかったのですが、ヨーロピアンな私には無理そうです。宿題はまだまだ終わっていませんが、この暑さの中で頭を使うなんて、考えただけでも頭が痛くなってしまいますね。

 幸い、明後日は友達と皆で海に行きます。きっと暑さも紛れることでしょうし、それまでは夏眠といきましょう。シエスタ……。

「シノ! 早めに宿題終わらせないと、去年みたいに最後の最後で泣くことになるよ! 早くやろうよー! それにシノは西洋人じゃな――」

 ……あ、自己紹介遅れました。私は大宮忍。今をときめくピチピチの女子高生です!……くぅ……zzzz……き……んぱ……つ……。

 

「なあ、『アリス』といえば金髪って印象ない?」

 アイスキャンディを片手に、陽子ちゃんが言いました。

 結局、私の家に友達皆で集まって宿題をすることになりました。

「うん? 当然わたしは金髪だよ?」アリスの金髪が揺れます。

「いや、そうじゃなくてだな……。『アリス』って名前の人って、皆金髪の女の子って印象があるなあと思って」

「それはきっと、アリスの金髪がきんぱつしてるからですよ! ほら、こんな綺麗な金髪!」

 私はアリスの黄金に輝く髪を撫でます。ああ、なんてきんぱつ。

「まあ、しのにとって、アリスはアリスよね……。でも、確かに『アリス』といえば金髪の女の子って先入観はあるわね」

 さっきからずっとまじめに宿題を開いている綾ちゃんが顔を上げました。今日もいつものツインテールです。

「アリスといえば、やっぱり『不思議の国のアリス』よね。アリスが転校してきた日の朝、しのがアリスからの手紙を見て、アリスだアリスだって嬉しがってた時も、陽子はまず一番に『不思議の国』のことを言ってたわよね」

「そうだっけ? よくそんなこと覚えてるなー」

「……べ、べつに陽子のことだから覚えてたとか、そんなんじゃ全然無いんだからッ!」

「な、なんでそんな照れてるんだよ」

 綾ちゃん、今年になってから皆で話すと顔を赤くすることが多いです。

「アヤヤの心のカメラとマイクは常にヨーコに向けられてマスからね! アヤヤはヨーコのパパラッチデス!」

 手で作ったカメラフレームを陽子ちゃんに向けて、アリスよりも長く降ろされた金髪を宙に広げているのがカレンです。日本と英国(イギリス)のハーフの金髪……きんぱつ……。

「アリスは英語圏でよく使われる名前デスネ! はなしをする時に人の名前を仮におく時もAliceはよく使いマス!」

「名無しの権兵衛みたいなものですね」

「シノ、ちょっと違うような……。というかそろそろ離してよシノ!」

 アリスにツッコミを入れられた上に、金髪に触れる手を離されてしまいました。嗚呼、金髪……。

「『不思議の国のアリス』のアリスもこっちのアリスと同じ金髪デスが、そのモデルとなったアリスは金髪ではありませんネ!」

「ディ◯ニーのアリスは金髪にエプロン姿だったわね」と綾ちゃん。

「何で伏せ字……?」と陽子ちゃん。

「ほら、デ◯ズニーって権利問題厳しいって言うじゃない? そもそも、この企画に私達が出て良いのかも怪しいのに……」

「い、一体何の話をしているんだ? というかもう伏せ字の意味無いじゃんか?!」

 綾ちゃんには、皆に見えない壁が見えているようです。

「ううん……?こういろんなアリスが出てくると、どのアリスのことを言っているのか分からなくなってきました。せっかくなので、私たちを『不思議の国のアリス』に当てはめてみましょう!」

     〈In the AliceWorld〉

「ヒツジからタマゴを買ったけど、近付いたものは木になっちゃう。タマゴもきっと木になるんだろうなあ……」

「大丈夫ですよ! 私は私です!」

「うわあっ! タマゴがコケシに?! ってシノ!」

 アリス役は私が、と言いたいところでしたが、ここはやはりアリスが適役でしょう。アリスがアリス。あれ?混乱してきました。

「シノはハンプティ・ダンプティなんだね。不思議の国には出てこないけど……。ハンプティ(ずんぐり)・ダンプティ(むっくり)と言うよりコケシだね!」

 そう言われると、自分はむしろこけしなのではないか、という気持ちになってきます。和洋折衷です。

「というかシノ! そんな高いトコロに登ってたら危ないよ!」

 私は高い塀に乗せられていました。

「それもそうですね。ですが、あいにく私はこけしですので、自分で降りられそうにないです……。王さまは、下に落ちた時は助けを出してくれると約束して下さったのですが……」

「王さま?」

 アリスは首を傾げます。肩から下がる金髪の房が何とも。

 すると、森の中から誰かがやって来ました。

「この国では、ハートの王サマと女王サマがいちばんエライのデス!」

「きんぱつ! きんぱつのウサ耳ですよアリス!」

 その人影は、きんいろに輝くロングヘアから2つの長い耳を立てていました。きんぱつにウサ耳だなんて、なんて眼福でしょう。

「カレンは白ウサギなんだね!」とアリス。

「どうでショウ? ワタシのウサ耳、似合いマスカ?」とカレン。

「似合う、似合いますよ! ペットにして飼いたいくらいです!」

「ダメだよシノ! シノにはわたしがいるでしょっ!」

 そう言って口を尖らせるアリス、可愛いです。

「それで、シノを塀から下ろしたいのデスヨネ? それではアリス、コレを飲むのデス!」

 そう言うと、カレンは何か液体が入った小瓶をアリスに手渡します。

「何コレ? とりあえず飲んでみるけど……。って何コレ?!すごくにがいよっ!」

 アリスは勢いで全部飲んでしまったようです。

「ソレはデスネ、グリーンジュース、青汁という飲み物デス! ベジタブルでヘルシーでショウ? ほら、アリスのカラダも」

 アリスの金髪の高さが段々と上がってくるのがわかります。

「わ、わたしの背が大きく! すごいよ!すごいよシノ!」

 アリスは私を下ろして抱きかかえてくれました。

「ついにわたしも高身長に! もう小学生だなんて言われないよ!」

 アリスの喜ぶ姿があんまり可愛いので、体形は変わってないだなんて言えませんね。

 

 白ウサギ――カレンに連れられて、王宮に向かいます。女王さまが私たちを呼んでいるそうです。途中、アリスの体は元に戻りました。すごく残念そうです。こけしの私は歩けないので、アリスに抱っこしてもらっています。

「あの小屋、中に誰かいそうですが何でしょう?」

 周りに木しか無い中で、ぽつんと建つ小屋を指差し……たいのですが、こけしなので出来ませんね。

「アレは三月ウサギの家デスネ! この時間デスカラ、きっと帽子屋たちを招いてティーパーティをしているハズデス!」

「お茶会?! アリス、行きましょう!」

 ここは『不思議の国のアリス』の世界、きっと英国風なお茶会が開かれているに違いありません。

 三月ウサギたちは、小屋の中でお茶会を開いていました。

 三月ウサギは黒髪ツインテールのウサ耳。というか、綾ちゃんです。

「って私が三月ウサギなのね……。私、もう少しまともだと思うのに」

「アヤヤはヨーコの前だといつも落ち着きがないからデスネ!」

「お、落ち着きが無いってなによっ!」

 綾ちゃん、そういうことです。

「ヨーコは帽子屋なんだねー」

とアリス。

 帽子屋は黒いスーツに黒い帽子を被っています。陽子ちゃん、やっぱり男装も似合いますね。

「ヨーコ、スーツきまってマスね! カッコイイデスよね、アヤヤ?」

「な、なんで私に振るのよっ!」

 照れる綾ちゃんを見てニヤニヤするカレン、楽しそうです。

「に、似合ってるん……じゃない……かしら?」

「あはは、そう?ありがと。綾もウサ耳いい感じだと思うよー」

「やっぱりアヤヤはウサギみたいデース」

 三月ウサギと帽子屋の間には、2匹のヤマネが座っていました。

「というか何で空太と美月がここにいるのさ?!」

と陽子ちゃん。

「僕らは女王さまから逃れてきたんだよ、姉ちゃん」

と1匹のヤマネ、空太くん。陽子ちゃんの弟くんです。

「女王さまの前で粗相をして、怒りを買っちゃったんだ。助けて、お姉ちゃん」

ともう1匹のヤマネ、美月ちゃん。陽子ちゃんの妹です。

「なんてことを……」

 女王さまの逆鱗に触れてしまうなんて、きっと大変なことです。

「女王サマがまたお怒りになってしまうナンテ……。今度はダレの首が飛んでしまうノカ……!」

 白ウサギのカレンは震えています。

「どーせいつもの嘘でしょー。いい加減にしろよなー。っておい、寝たフリしてごまかすな!」

 陽子ちゃんは呆れたように言いました。

 陽子ちゃんの弟妹は『嘘つきブラザーズ』と呼ばれるほど、よく嘘をつくのです。今は夏なのに、冬眠したフリをしているようです。

「ねえカレン、女王さまってどういう人なの? そんなに怖いの?」

 アリスが首を傾げます。確かに、女王さまが誰なのか気になります。

「女王サマはデスネ、背が高くてスタイルが良くて――」

「貴方たち、いつまでここで道草食ってるつもりなのよー!」

 ドアが開き、ドレスに身を包んだ女性がカレンの言葉を遮りました。

「じょ、女王サマ! 申し訳ゴジャイマセン!」

 というか、私のお姉ちゃんじゃないですか!

      〈In the ALifeWorld〉

「女王様が何のことか知らないけど、宿題はどうなってるのよ忍~!」

「女王さまー! お許しをー!」

 

 著:高校時代のわたし