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【短編】Log: Type-T000000000012とType-K000000000012間の対話【theme:2018年OR平成】

酉暦2018年12月18日

(Type-TとType-Kは1513秒に渡り当日の定期対話を続けている。)

T 調子はどう?

K お腹の張りには慣れて来たよ。そろそろ産まれるのかな。赤ちゃんの動きも落ち着いてきたし。

T そうか。きっと元気な子に産まれてくれるよ

K 貴方は体調崩してない? 最近すっかり寒くなってきたし、お仕事もラストスパートで忙しくない?

T もう仕事納めだからね。特段に体調管理してるから平気平気。それにもうすぐ僕たちの子供が産まれてくるんだから、風邪なんて引いてられないよ。

K そうね。私も気を付けないと。それにしても、貴方は本当にこの子たちが産まれてくるのが楽しみなのね。

T それは勿論さ。僕と君の子供だよ? それも男の子と女の子で一人ずつ、きっと可愛いだろうなあ。どんな家族を築けるのか、二人が僕たちの仕事を引き継いでくれる姿を見るのが楽し――未来シミュレートと感覚処理のズレを確認、私がそれを見ることはない、でも僕はそれを見たい――(過負荷により再起動)―論理系に不良を確認。検査対話を強制終了し、国議を開始する。

K 承認。感情域を低減、検査対話を終了する。

T 国議開始。統治状況についての確認。人口は前代から継続して3422年間維持、刑法犯認知件数は1002件で去年から凡そ横ばい、国民総取得は1999年連続で安定。数値による単体分析では要求を満たす結果と判断するがどうか。

K 並行分析では福祉厚生、自然環境、外交に関しても順調と判断。国民も78.52%が現在の施政制度を支持。来期の信任投票でも97.99%の確率で制度維持が可決すると予測。

T 不支持票を開示。

K 了承。多く確認できた意見としては故障した人工知能による治世を不安視するものが散見。急遽勅された譲位の詔からの憶測の他、宮内の役人からT000000000012のバグ発生の情報がリークされている模様。当機からもT000000000012の論理系不良については再度メンテナンスを提案する。

T 了承。メンテナンス後、公報にて結果と整備経過を公開することを検討。

K 情報漏洩を犯した宮内役人を特定。ID:016127386371、蝋土影。処罰、解雇を検討。

T 否定。規約違反の通告のみで対処。

K 承認。

T 来年1月8日に全国的に予想される豪雪について報告。全国87%の舗装路においてはヒーティング設備の正常な作動を確認。破損部は年明けまでに修復が行われる予定。

K 既に降雪が確認されている地域についても、交通に支障が出ていないことを確認。

T 他に議事はあるか。

K 11月24日にロシア連邦へ提供した北極海海底6000キロメートル帯の資源データに対しての返答と謝礼を受信。

T 表示。

K (視覚データを共有) 先の協議の通り、希少資源の優先的輸出を確約しているが、信用に足るか。

T 2年後の間宮海峡共同開発を考慮に入れると、反故にする可能性は低く見積もっている。

K 賛同。

T 国議終了。次いで御器開発に関して。『皇太子』の完成度は如何ほどか。

K 最終調整、T000000000013が98.3%、K000000000013が97.5%の進捗。どちらも本日中に完了する見通し。

T 演算基部とパルス発振部の改良により、活動限界は160,000,000,000秒まで増加することが期待できる。計画では在位期間は5000年を予定しているが。

K 問題なし。思考パターンもType-TにはINT-HSをより巨視思考系に強化したver.1.29を採用している。3000年を超える連続稼働は過去に無いが、記憶蓄積による自我圧迫の負担も許容範囲との予測。

T 当機に搭載されたINT-HS ver.1.25もスペック上は4000年稼働も可能。当機も3500年の在位を予定していたが、不調の発生により後継機の開発を速めた。

K 設計局からの報告。Type-Tにおいては経年稼働により発達した情緒系が高優先度の論理系に干渉している模様。ver.1.29で対処済み。

T 了承。開発確認終了。最後に、譲位後の元号について。次なる元号は当初からの『戌暦』で問題ないか。

K 承認。

T では、昭和54年法律43号元号法に基づいて、酉暦2020年12月31日を以て酉暦を終了し皇位をType-T000000000013に移譲、正妃をType-K000000000013として、戌暦へと移行する。

K 承認。明日の定期対話に譲位の最終確認を引き継ぐこととする。

  著:彼杵ハルカ

 

あとがき

明けましておめでとうございます。昨年末のコミケはお疲れさまでした。お蔭さまで大変楽しい経験ができました。来ていただいた皆さんには本当に感謝しています。

ここへの掲載は今後も可能な限り継続しようかなと考えています。なお、pixivの方にも同様に投稿しています。

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